１．１　幼少年期と召命

 

　ミシェル・ガリコイツは、１７９７年４月１５日、イバールの貧しくも深い信仰を持ったキリスト教徒の家庭に生まれた。その住み家のみすぼらしさは、次のように描写されている。

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　ガリコイツの生家は、狭い山間（やまあい）の下で、山肌にへばり付いている、とても小さなあばら家であった。台所・居間・納戸・屋根裏の四つの部屋しかなかった。このようなガリコイッツの住まいは、その村では極貧の埴生の宿であった。

ガリコイッツ神父の生家

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　ミシェル・ガリコイツは、５才か６才の頃、台所で小さな食卓を祭壇に見立て、吊り香炉の形をした焼き物の壺のかけらを、蝋燭（ロウソク）の灯の上で振って、ミサの儀式の真似事をしていた。　　

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　彼の両親、アルナウド・ガリコイッツとグラティアヌ・エシェブェリは、フランス大革命の時に結婚して、司祭たちがスペイン国境を越えてスペインに逃れるのを助けた。

　彼らには子供が６人いた。ミシェルは一番年上であった。彼はとても激しい気性の持ち主で、彼の母は、ミシェルを抑えるのに大変な苦労をした。

　後年彼は、こう語っている。「もし私の母がいなかったら、私は極悪人になっていただろう」

 

　とても幼い頃から、ミシェルは修道士への召命感を抱いていた。

 

　しかし、彼の父はミシェルを羊飼いとして働かせたので、随分長い間、学校に行くことが出来なかった。

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イバールではないが、ルーマニアの羊飼いの

光景。Wikipediaの“berger”の項による

　ミシェルはいつも「公共要理」の本★と一冊の「（フランス語）文法書」★★を携えて牧場へ行き、羊の番をしながら、それらの本を読んでいた。

　このように学校教育を受けなかったので、最初の聖体拝領を受けたのは、ようやく１８１１年（１４歳）になった時であった。

　　　補註

　　　　　　★　日本語版の「公共要理」は、小型本だがページ数が242ページと分厚い。この事からして、フランス語の「　　　　　　　　公共要理」も、分厚かったことが類推できる。

　　　　　　★★　「（フランス語）文法書」

　　　　　　　　　　ミシェルはフランス側のバスク人★★★で、バスク語を話していた。

　　　　　　　★★★　バスク地方の７地域のうち３地域は、フランス側にある。

　　　　　　　★★★★　フランス側バスク地域の歴史と地理概観

この歴史と地理の概観の記述に目を通すと、ガリコイッツの生家がいかに粗末で、

「赤貧洗うがごとし」の状態であったことが得心できる。

　　　　　　　　（バスク語については別頁で垣間見て、ミシェルの並々ならぬ苦学ぶりを理解することにする。）

　　　　　　　　　バスク語は難解で有名だが、裏を返せば、ミシェルにとってフランス語は、外国語であった。

　　　　　　　　　ちょうど、ルルドのベルナデッタにとって、フランス語が外国語であったように。

　 ミシェルは、司祭になることを心の底から願っていた。しかし、彼の両親は余りにも貧しく、勉学費用を支払うことが出来なかった。

　それでも、彼の祖母は、あの手この手を打って、ミシェルを隣接する司祭の家の使用人として雇用させた。

　こうして、ミシェルは、勉学を断念せずに済んだ。さらに、彼は学業の継続資金を得るために、小神学校の自習監督として働いた。

　とうとう念願かない、彼は１８２３年（２６歳の時）１２月２０日、バイヨンヌ★の司教座聖堂で、司祭に叙階された。

★　補注　　バイヨンヌ　Bayonne 　　フランス南西部，ピレネーザトランティク県の都市。 　　スペイン国境より35km，アドゥール川の河口より5km余り上流にあり，ランド，バスク両地方の境界に位置する。 　　人口4万2000(1990)。古代から交通･軍事上の要衝であり，また中世にはイギリスの支配下で，18世紀には港として繁栄した。 　今日では，港としてのほか，この地方の行政･商業･金融の中心として重要であり，工業(航空機製造，化学など)の発展も見られる。 　　サント･マリ司教座聖堂(13〜16世紀)，ボナ美術館，バスク博物館などがあり，またチョコレート(17世紀から)，生ハムでも有名。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　井上 尭裕　（平凡社世界百科事典より）

　　1.　２　司祭職

　　ミシェル・ガリコイッツは、最初にカンボ★の助任司祭に任命された。そこで、公共要理と告解の仕事をした。

　　　　　　　　補注　★　カンボ（Cambo）

　　　　　　　　　　　　　　　バイヨンヌ南南東１６Ｋｍにある町。

（上の画像は、拡大出来ます）

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