「対象外」の「アンナ・スパイアーニの場合」を、紹介しよう。◆１　

　「世界的な規模でセンセーションを巻き起こした、もう一つ◆２の癒しの報告があるが、これも奇跡とは認められていないのである。

　すでに新聞雑誌が報道したように、モナコ◆３出身の２５歳の女性アンナ・スパイアーニは、ルルドへの巡礼に際して、両脚の麻痺から癒された。

モナコ公式サイトより（http://www.visitmonaco.com/index）

　アンナ・スパイアーニは、一か年ほど前にモーターバイク事故を起こし、その際に彼女の婚約者は一命を失い、彼女自身は麻痺してしまった。彼女は、もはや車椅子から離れることが出来なかったし、医師たちは彼女にもはや、いつか再び歩くことが出来ると言う希望を与えてくれなかった。

モナコ公式サイトより　（http://www.visitmonaco.com/index）

　やがて、モナコ公紀グラシア・パトリシアは、この若い少女と他の２２０名のモナコ人たちに、気前の良い財政援助によって、ルルドへの巡礼を可能にした。

　そして、驚くべきことが起こった。すなわち、リヴィエラ◆４の小国からのこの巡礼行列が、洞窟に進む間に、車椅子の中のアンナは、病んでいる両脚に力が還流してくるのを感じた。彼女は立ち上がって、１２カ月ぶりに、最初の数歩を歩んだのである。

　翌日、喜びに顔を輝かせた公紀は、モナコの司教、モンシニョール・バルトおよび助任司祭トゥッカーと共に、その若き娘のいやしを祝ったのである。

モナコ公式サイトより　　（http://www.visitmonaco.com/index）

　モンテ・カルロの駅頭では、アンナの姉が、癒されて帰郷する妹を待ち構えていた。彼女は、その土地の新聞から、出来事について聞き知っていた。

　ルルドからの特別列車が停まったとき、幸運と嵐のような再開の涙があった。何かを言う事も出来ず、二人は自ずと抱き合った。

　けれども、一年もの間、何一つ助けも出来ずに、妹の苦しみを共に見つめなければならなかった少女にとって、喜びは余りにも大きすぎた。・・・彼女（アンナの姉）は、失神し、ガクリと倒れてしまった。

　フランスとモナコの警察官が、助けに彼女の元に駆けつけた。この感動的な再開シーンを共に体験した人々の多くの眼に、感激の涙があった。それを恥らう者は、一人もいなかった。

　しばらくぶりに初めてアンナは、走ることが出来、階段を昇ることさえも出来た。そして驚くべきいやしの後の、彼女の最初の道は、彼女をルルドの洞窟へと導いたのであった。

註◆１・・・・・次の著書より

　ゲオルク・ジークムント著「ルルドにはまだ奇跡があるのか」エンドルレ書店　Ｐ．３，５，６

註◆２・・・・・先述の例とは、　１９５５年ごろ、イタリアのアルフォンシーノ・コットーニが、ルルドに巡礼して、ルルドの泉により、骨結核より癒された例。嬉しさのあまり、ルルドの医務局に届けなかったので、審査の「対象外」となった。

註◆３・・・・・モナコ

ヨーロッパ南部，地中海に臨む小公国。フランス南東部，イタリアと国境を接する。世界第2の小国である。人口３万人　（　平凡社「世界大百科事典　『モナコ』の項による）